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PlayStation®Vita「Side Kicks!」発売1周年

ー2017年3月23日。1年前に「Side Kicks!」は発売しました。あっという間に1年が過ぎたように思いますが、その記念すべき1周年を皆さんと一緒にお祝いさせて頂けたことは、本当に嬉しい限りです。ご参加頂いた皆さま、ありがとうございました。ゲームというのは、エンターテイメントであり、体験であり、商品でもあります。発売前に、雑誌に紹介記事を載せてもらったり、プロモーションビデオを流したり、体験版で遊んでもらったり、そういったものは「宣伝」と呼ばれます。「Side Kicks!」は発売前はもちろん、発売後にも様々な展開をさせて頂きました。グッズを発売したり、コラボカフェを開催したり、WEB企画で皆さんにも参加して頂いたり。発売後にも出来るだけの展開をしたい、それは僕がずっと思っていたことでした。もちろんそれは、まだゲームをプレイしていない人に知ってもらう、買ってもらう、遊んでもらう「宣伝」でもあります。最近は、ライトに遊べるゲームがとても増えたためか、ゲームというエンターテイメントも消耗されるようになったと感じています。買って遊んでクリアしたら終わり。あるいは、溢れるエンターテイメントに紛れて、出会う機会のないまま、過ぎ去っていく。エンターテイメントには色んな形がありますから、遊ぶ人が面白いと思うならそれが正解です。暇つぶしのゲームも、没頭して徹夜で遊ぶゲームも、どちらもエンターテイメントです。どんなメディアでも、どんなお金や時間の使い方でも、楽しいものが正義だと僕は思います。それでも僕は、自分と、そして開発スタッフ、関わってくれた人たちみんなの愛情を受けて世に出た「Side Kicks!」というゲームを「消耗」されたくない、遊んでくれた人の心のどこかに残り続けて欲しい、と強く思っています。発売1周年企画のひとつに、サクラダポストというものを企画させて頂きました。お手元に「サクラダタイムス号外」が届いた方、お楽しみ頂けたでしょうか?皆さんからたくさんのメッセージや感想を頂きました、ありがとうございます。お手紙やプレゼントも頂いてしまいました。(中にはオレンジのバラの花束を再現した、チョコレートの花束も頂いたので、1周年記念の写真に一緒に写させて頂きました!……その後、チョコレートは美味しく頂きました)皆さんにこんなに愛してもらえる「Side Kicks!」は本当に幸せです。さて、一言お礼を書くつもりが、やっぱり長くなってしまいました。僕の悪い癖です。「Side Kicks!」発売1周年を一緒にお祝いしてくれて、ありがとうございました!(発売前からお祝いしてきた、みんなの誕生日ですが、アンカーは4月23日、リコの誕生日です。ツイッター企画に協力してもらえるよう、サクラダ警察に依頼中です)「Side Kicks!」シナリオ&プロデュースminetaka

ノラ誕生日企画書き下ろしSS「Snowflake」

 ーーー12月のニューヨーク。  見慣れたこの景色は、何故か居心地が悪い。うまく表現する言葉が見当たらないが、留まるための場所ではなく、ただ通りすぎるだけの場所、とでも言おうか。クリスマスを祝う街の喧騒を、ただただ煩わしく感じていた。 ふと、鼻先に冷たさを感じ視線を上げると、雪だった。(また降り始めた。夜のうちに、また積もるんだろうな) 西海岸のサクラダでは雪は降らない。この街に愛着はなくても、冷たく研ぎ澄まされたこの空気は好きだ。大きく吸い込んで、白い吐息に変える。 生まれ育ったマンハッタンは、とにかく騒がしい街だ。サクラダスクエアも賑やかな繁華街だが、それとも空気が違う。誰もが通り過ぎる。自分の周囲だけがまるで早送りのようにさえ感じる。人生の半分以上を過ごした街のはずなのに、いつまで経っても自分は他所者だった。『サンタクロースにもノラにも会えないクリスマスになりそうだね』 冷えきった掌の携帯をじっと見つめた。画面には、届いたばかりのメッセージ。仕事柄、言葉の裏を読むのは慣れている。それなのに、彼女の言葉にはいつも裏が見えない。深い意味はない、きっと、それだけのこと。 ポケットに手を入れると、さっき露店で買った小さなオーナメントに触れる。指に引っ掛けて、目の前にかざしてみる。小さな、雪の結晶の形。街の光を反射してキラキラと光る。幼い頃の思い出にあるクリスマスツリーはとても大きくて、当時の俺は華やかな飾り付けを冷めた目で見ていた。周りの大人からすれば、どれだけ可愛くない子どもだっただろう。どんな飾りも光も記憶にはたいして残っていないが、小さな雪の結晶のオーナメントだけは、手に握りしめた感触まで覚えている。毎年、祖母が小さな箱から取り出してくれた、小さな雪の結晶。それだけは、いつも自分の手でツリーに吊り下げた。爪先立ちで、出来るだけ高い場所へ、より高い場所へ。 飾るツリーもないのに手に取ってしまったオーナメント。土産だと言って渡せる頃には、とっくにクリスマスも終わっているだろう。でもきっと、笑って受け取ってくれるような気がする。『こっちでは雪が降ってますよ』  携帯にメッセージを打ち込んでいると、子どもの笑い声が聞こえてきた。向かい側の道路で、空を見上げて飛び跳ねている子どもだ。小さな手を高く上げて、降り出した雪に触れようとしている。その姿にふっと口元が緩んだ。 雪が降ってますよ、そう言ったら、彼女はどんな声で笑うんだろう。 打ち込んだメッセージを削除して、代わりに電話番号を入力する。きっと、子どもみたいに笑うだろう。通話ボタンを押そうとして、指を止める。 ーーー雪が降っている、ただそれだけのこと。 打ち込んだ電話番号を削除し、カメラに切り替えた。画面越しに見るセントラルパークと、ビルの光。かすかに降り始めた雪は画面には映らない。 雪が、降っている。ただ、それだけだ。